と 「と、いうわけで」
み 「しばらくお世話になることになりました」
と&み 「「よろしくおねがいしまーーす!!」」
い 「うむ、よろしくな」
ゆ 「やれやれだ……」
い 「そう辛気臭い顔をするなゆば、賑やかになっていいではないか」
ゆ 「扉を直すのはどうせ俺なんだ……」
み 「はいはーい!」
い 「なんだみなも?」
み 「えっとぉ、あのねぇ」
と 「とりあえずお互いの自己紹介でもしませんか?」
み 「あーん! お兄ちゃんソレあたしの台詞ー!」
ゆ 「それもそうだな、じゃあ俺から。名前はゆば、年は19。職業は家事手伝いで、主な仕事はじゃじゃ馬の世話と相手」
い 「くらえっ」
ゆ 「いてっ! いててっ!! いてぇっつのやめろっておい!」
い 「ふん、これは天誅だ」
ゆ 「ったく、どうしてそんな貧弱な体でこんな強烈なデコピンを連発できるんだお前は……」
い 「貧弱っていうな」
ゆ 「どこからどう見ても貧弱じゃな……」
い 「それ以上言うと……」
ゆ 「……降参」
い 「ふん、始めからそうしていればいいのだ……いろはだ。年は18で、特に仕事はしていない」
と 「僕は人間年齢で言うと16ぐらいで、この春から高校2年生になります」
み 「えっとぉ、あたしは15歳。あたしも高校1年になるよ!」
ゆ 「はい終わり」
い 「ゆば、そろそろ夕食にしよう」
み 「ちょっとちょっと!!」
ゆ 「なんだ、まだ何かあるのか?」
み 「もっとちゃんと自己紹介しようよ〜!」
い 「したではないか?」
ゆ 「うん、した。もう言うことなんてねーぞ?」
み 「そんなこと言わないでよ〜、二人はあたしたちのおとーさんとおかーさんになるんだからぁ!」
ゆ 「おとーさん?」
い 「おかーさん??」
と 「あれ? お二人が僕らと養子縁組したいと言ったので願いを叶えたって実父が……」
ゆ 「……なんて亀だ」
い 「まんまと嵌められたようだな、ゆば」
ゆ 「他人事みたいに言ってんじゃねぇよ! くそっ、やっぱりあの時もっとちゃんと突っ込んでおけばよかった!!」
い 「お前がよく読んでから願いを言っていればなぁ……」
ゆ 「元はと言えばお前があんなことするからだろうが!」
い 「何だ? 私のせいにするのか?? お前だって私の指示通りにやっていたではないか!」
ゆ 「ぎゃーぎゃー」
い 「わーわー」
み 「え? え? お兄ちゃん、どういうこと??」
と 「どうやら、あの亀は僕らのみならずこの二人の事も騙していたらしいよ」
み 「えぇ〜!? じゃああたし達どうなっちゃうのぉ!!?」
と 「さぁ、それは二人次第だろうね」
み 「あぅ」
と 「もし二人に見捨てられたら、毎日その日の食べ物の心配をしながら二束三文の報奨のために体がボロボロになるまで働いて、働いて、そして死んでいくことになるだろうねぇ」
み 「ふぇぇ」
と 「いや、そもそも素性もわからない子供二人を働かせてくれる所なんてこのご時世にはもう無いかも知れない。そうなったら、僕らは公園のハトやドブネズミを獲ったり、ゴミを漁ったりして生き、やがて野生化して謎の研究機関に捕獲されてモルモットとして一生を終えるかもしれない」
み 「はゎゎゎ」
と 「さぁ、どうするみなも! この状況を乗り越えるために君に出来ることはなんだ!!」
み 「じっ……」
ゆ 「だから! 俺は冷蔵庫のプリンなんて食ってねぇって……あ?」
み 「じぃ〜〜〜〜っ……」
ゆ 「……なんだよ?」
と 「たぶん、すがる様な目だと思います」
み 「じぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜っ……」
ゆ 「……うん、うん、わかった、わかったから今すぐ俺を呪い殺そうとするのをやめるんだみなも」
と 「じゃあとりあえずあの亀のことは置いといて、これからどうするのかを決めたいんですが」
い 「どうするも何も、お前たちは他に行くところがあるのか?」
と 「正直なところ、お二人に頼るしかないです」
ゆ 「じゃあそれしかねぇだろ」
い 「決まりだな」
と 「え……いいんですか?」
ゆ 「いいも何も、もともとお前らの面倒は見るつもりだったしな。養子は無理だが預かってやるくらいなら出来るさ」
い 「やれやれ、お人好しめ」
と 「あ、ありがとうございます!!」
ゆ 「礼を言うよりまずそいつの魔眼を封じてくれ」
と 「みなも、だめ」
み 「うぅ〜〜……」
と 「だめ、まて、おすわり」
み 「くぅん」
と 「大人しくなりました」
ゆ 「……まぁいいけどな」
い 「それで、騙されていた、と言うのは?」
と 「さっきも言ったとおり、僕らはお二人の養子になるってあの亀に聞かされていて、半ば追い出される形で家を出てきたんです。荷物は後から送ると言っていたので、多分明日には着くんじゃないかと」
ゆ 「とんでもない親だな」
と 「いえ、神の世の中では割とよくある事なんですよ。人と違ってその気になればなんとか生きていけるんで」
ゆ 「そんなもんかねぇ。ま、お前らがそれで納得してるならそれでいいか」
い 「さて、それでは色々と決めなければな。その前に、ゆば」
ゆ 「へーへー、わかってるよ。晩飯だろ、これから作るからお前らはテレビでも見てろ」
い 「うむ、早くしろよ」
と 「すいません、お手洗いはどこでしょう?」
ゆ 「廊下出てあっちいってこっちいってまっすぐ」
み 「……」
ゆ 「さーて、どうするかな。たしか冷蔵庫に昨日作ったカレーの残りがあったっけ」
み 「……ねぇ」
ゆ 「ん? どうしたみなも?」
み 「……ほんと?」
ゆ 「ん? 何が?」
み 「ほんとにあたし達、一緒に居ていいの?」
ゆ 「あぁそのことか。心配しなくても、俺たちは一度面倒見るって言った奴を見捨てたりしねぇよ」
み 「約束、してくれる?」
ゆ 「何だ? 俺のこと疑ってんのか?」
み 「そ、そういうわけじゃないけど……」
ゆ 「いーよ、約束してやる。ほれ、指切り」
み 「あっ……」
ゆ 「ゆーびきーりげーんまーんうーそつーいたーらはーりせーんぼーんのーます」
ゆ&み 「ゆーびきった」
み 「……えへへ」
ゆ 「さてと、それじゃあ居間に行って晩飯できるの待ってな」
み 「ううん、あたしも手伝う!」
ゆ 「ん、そうか。よーしじゃあ急いで作るぞ! いろは達がお待ちかねだ」
み 「うん!」
い 「……なんだかキッチンが騒がしいな」
と 「たぶん、みなもの仕業です」
い 「止めないのか?」
と 「ゆばさんにお任せしますよ」
い 「ふっ、ゆばも大変だ」
み 「そうだっ、これも入れたらおいしくなるかも☆」
ゆ 「よせ!! 味噌汁にタバスコなんか入れるんじゃない!!」
み 「次はぁ、こっちにこれを……」
ゆ 「酢をどうする気だ! チャーハンに酢をどうする気だ貴様ぁー!!」
ゆ 「とおる!!」
と 「はい?」
ゆ 「地獄を味わいたくなかったら、こいつを絶対にキッチンに入れるんじゃない!! いいな!!!?」
と 「わかりました。さ、みなも。こっちにおいで」
み 「ぶ−ぶー」
い 「ゆば、私はもう待ちくたびれたぞ」
ゆ 「あと30分待て、一から作り直す」
い 「やれやれ、とおる、もう一局やるぞ」
と 「ふふふ、僕とオセロで互角にやりあえる人に出会うのは数年ぶりですよいろはさん」
ゆ 「さて、それでは」
い 「いただきます」
と 「いただきまーす」
み 「いただきま〜すっ」
ゆ 「で、だ。とりあえずお前たちの部屋は一緒になるけどいいか?」
と 「僕は構いませんよ」
み 「あたしも別に平気だよ」
ゆ 「じゃあそういうことで。部屋は廊下出て真っ直ぐ行って曲がってそっちだから。とりあえず後で布団を持ってってやるから、今日のうちに荷物をどうするかとか決めとけよ」
と 「わかりました」
み 「お兄ちゃんお醤油とってー」
い 「ゆば、一度二人を案内しておいたほうがいいんじゃないか?」
ゆ 「あー、無駄にデカイからなぁこの家。よし、食い終わったら一通り案内してやるよ」
と 「ありがとうございます」
み 「ありがとーお父さん!」
ゆ 「みなも、俺は一緒に暮らすとは言ったがお前の父親になるつもりはないぞ?」
み 「え? そうなの?」
ゆ 「あぁそうだ」
み 「じゃあなんて呼べばいい?」
ゆ 「呼び捨てでいい」
み 「えー、そんなのつまんなーい」
ゆ 「つまんないとか言われてもなぁ……」
み 「なんにしようかなぁ〜、かわいい名前がいいなぁ〜」
ゆ 「別にいいって」
み 「ダメだよ! ニックネームは友情の証しなんだから!」
い 「ゆば、好きに呼ばせてやればいいではないか」
ゆ 「でもなんか嫌な予感が……」
み 「う〜……そうだっ! ゆばちゃんだから、ゆんゆんにしよう!」
ゆ 「ゆんゆん!?」
と 「ゆんゆん、ですか?」
み 「うん、なんかこう『ゆ〜んゆ〜ん』って、鳴き声みたいで可愛いでしょ?」
と 「あぁ、なるほど」
い 「とてもいい名前だな」
ゆ 「納得するなよ! ってかとおる笑ってんじゃねぇ!」
み 「これからよろしくね、ゆんゆん!」
い 「よかったなゆんゆん」
と 「ゆんゆんさん、お世話になります」
ゆ 「ヤメロォォォ!!!」
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