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ちょうど雫の正面、生徒たちの背後から横っ面めがけてソバットを放つ。光影の蹴りをまともにくらった生徒は数メートルほど地面を転がる。それが止まるよりも先に、残りの3人が雫の足元に転がった。
「楓が心配だ、急ぐぞ」
そう言って、雫は一目散に駆け出した。光影は一瞬ジョージを持っていこうかと考えたが、雫を見失うわけにはいかないので放っておいた。
委員会を終えた楓が教室から出てくるのと、雫が駆けつけるのはほぼ同時だった。
「あ、雫お帰りー」
いつも通りの挨拶をする楓に詰め寄る雫。
「お帰りって、お前なんともないのか?」
尋常ではない雫の様子に、楓は思わずたじろぐ。
「いったい何のこと?」
「さっき校門のところで襲われたんだ。てっきりお前も襲われてるもんだと思ったんだが…」
「ちょっと、だったらあとの二人はどうしたのよ」
雫は後ろを振り返り、あ、と声を上げた。
「ジョージは校門のあたりに転がってる。光影は…ここにくる間に振り切っちまったみたいだ」
「雫、また良次を気絶させたの?少しは加減ってものを知りなさいよ」
はぁー、と溜め息を吐く楓。雫も少し申し訳なさそうに唸る。
「って、今はそれどころじゃないわね。襲われた時の状況を詳しく聞かせてちょうだい」
「ああ、校門のところで操られてるらしい生徒に待ち伏せされてた。戦闘能力はさほどでもなかったが、周りの生徒は全く気付いてなかった」
「そう…だとしたら専門は隔離か操作かしら。どちらにせよやっかいな相手だわ」
「とりあえず羽で探してみてくれ。もしかしたらこの学校の中にいるかもしれない」
「雫さーーーーん!」
雫が背後から響いた自分の名前に振り返ると、廊下の端から走りよってくる光影の姿があった。
「雫さん! おいていくなんて酷いじゃないですか!」
「光影、ちょうどいいところに来たな。これからさっきの生徒を操ってた奴を探すことになったから、ひとっ走りジョージを拾ってきてくれ」
「そんな! 俺今までずっと走って…」
「知るか。三分で戻って来い。よーいスタート」
「あぁーもう!!」
無情にも進んでいく雫のカウントに、なにか脅迫めいたものを感じたのか。走り去る光影の姿はあっという間に見えなくなった。
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